月下のピアノ話 その1
月下は小さい頃からピアノを習っている。音大には行かなかったが、今でもレッスンには通っているし(ピアノの先生って、何歳になってもおっかないんだよなぁ・・・llllll(=_=;)llllll)頼まれれば、教えてもいる。
下手だけど。ヾ(ー ー;) ォィォィ
そんな私が、現在愛用のグランドピアノを手に入れたのは2年前。まぁ、いろんな偶然が重なって、そういうことになったのだが・・・・。
他の楽器のことはわからないが、ピアノを買うというのは、結構大変なことだった。いや、正確に言えば、私の場合は結構大変だった。
というわけで、今回は、そんなお話。
まず、いつもお世話になっているピアノ屋さんに相談した。
「今弾いているアップライト(縦型のピアノ)を手放して、グランドを入れたいんだけど・・・・」
サイズや機種(とは言わないんだろうか?)、価格の相談等をして、
「じゃぁ、一度工場の方に見に来ませんか?」
ということになった。ショップなんて、洒落たもんじゃない。ほんとに、工場。町工場。雑然としただだっ広い倉庫のようなところで、技師の人達がピアノ線を張り替えたり、反響板を交換したり・・・・といったたぐいの作業をしている。
そこに、私の注文をクリアしている数種類のグランドがずらっと並んでいる。でもって、これを端から弾いてみる。中には、ちょっと触っただけで「あ、これはパス」っていうのもある。あれこれ弾いてるうちに、違いがだんだんわからなくなってきたりも、する。いろんな香水の匂いを嗅いでいると、だんだん見分けがつかなくなってくるのと一緒のこと。この時ばかりは、直感が大事だとつくづく思った。 そんなことをしながら、その中から自分と相性の良さそうな1台を探し出す。
しかし、まだそれは買わない。もちろん、それがすっごく気に入ったのならそれを買えばよいのだが、私の時は、さらにもう一手間かかった。
「せっかくだから、浜松の工場へ検品に行きませんか??」
「は・・・浜松??」
浜松には大きなピアノ工場があるのだ。今度はそこまで足を伸ばす。
2ヶ月後。 「準備が出来ました」という電話をもらって、私は浜松に向かった。新幹線で浜松駅に降り立つと、迎えに来てくれていた車で、一路工場を目指す。
今度の工場は、町工場とはワケが違う。広い敷地の、いわゆる立派な工場。ここでは、修理やオーバーホールだけではなく、生産ラインで一からピアノが作られている。
接客室で待っていると、ネクタイを締めたおじさんが現れる。この人に連れられて、向かったのは検品室。天井の高い、広い部屋で、工場の騒音も入ってこない。 そこに、わたしが町工場で気に入ったピアノと同じ型番のピアノが4台。まったく同じモノが4台、である。その中から、「さぁ、気に入ったのを選んでおくれ!!」ということなのだ。正直言って、これには驚いた。たった1人のお客に、たった1台のピアノを選ばせるために、ただそのためだけに、まったく同じピアノを4台、作って、調整して、並べて、待っていてくれるのだ。申し訳ないようだ。
”おいおい、同じ型番のものじゃ、どれを選んだって同じだろ?”って思うでしょ?しかし実際には、音色、タッチ、響き、いろんな点で、ほんの少しずつ違っている。ほんの少しずつ違っているからこそ、検品という作業が必要なのだ。 まぁ、木工製品ですからね。違って当然といえば当然なんですけど。
浜松まで同行してくれたピアノ屋さんに相談しながら20分ほど試弾させてもらって、「じゃぁ、これで。」ということになると、案内をしてくれたおじさんが胸ポケットから出した名刺に、私が選んだピアノの製造番号を書いてくれる。そして、わたしがそれで間違いのないことを確認すると、その名刺をもらって、おしまい。「では、このピアノをお届けします」ということになるのだ。今度こそお買い上げである。
工場の見学をさせてもらい、工場を後にするころには、すでにお昼時を過ぎていた。ピアノ屋さんのおじさんと「せっかく浜松まで来たんだから・・・・」と、うなぎを食べたのも、美味しかったなぁ〜〜・・・。
私が選んだピアノは、その後陸路を運ばれて、ピアノ屋さんに到着する。そこを経由して、ようやく私の家に搬入となり、数週間後、ようやく再会を果たすこととなった。
楽器というのは、まぁ確かに買い物には違いないのだが、でも、むしろ出逢いだと思う。気に入った1台に出逢う、ということが大切なのだと思う。 私のピアノは、特別なピアノではない。フツーのピアノだ。当たり前だ。もっと素晴らしいピアノは山のようにあるだろう。値段だって・・・フツーだ。 しかし、手間隙かけて、時間もかけて、真剣に選んで、やっと巡り合えた1台だと思う。そして、弾き手のそういう気持ちを支えてくれる人達に出逢えたことも、幸運だと思う。
今日、友達がグランドピアノを買った。私がピアノ屋さんを紹介し、一緒に検品に行った。おじさんは相変わらず元気だった。 先日、仕事で浜松の工場に行ったら、元X JAPANのYOSHIKIさんのピアノがメンテだか修理だかに入っていた話で盛り上がった。YOSHIKIさんのグランドは、蓋を開けると中がゴールドではなくシルバーなのだそうだ。「でも、なんでYOSHIKIさんのグランドだって、分かったの?」と訊いたら「だって、大きくYOSHIKIって名前が入ってたもん」だって。あ〜〜なるほど。そりゃぁ、間違いない。で、「もしや?」と思って確かめたら、やっぱりYOSHIKIさんのものだったそうだ。もちろん、特注。値段、不明。
彼女は、今日選んだピアノがとても気に入ったようだ。これも良い出逢いだったらいいな・・・と、願うばかりだ。ちなみに、色はアイボリー。オマエの家は結婚式場かっ!!(笑)しかし、モノは非常に良かったので、安心。
私が手放したアップライトも買い手が決まり、数ヶ月前に次の持ち主となる人に届けられたそうである。たくさん弾いてもらっていると、嬉しい。
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