みんなに嫌われる、我が家の稼業。





うちは歯科医院である。歯医者さん。みんなが嫌いな、あの歯医者さんだ。


もちろん月下はドクターではない。ドクターはうちのつれあい。私は、院長室でこまごまとした事務を執っている・・・・と言えば聞こえはいいが、早い話が雑用係である。診察室には出ないし、受付にも立たない。そういう仕事は、若くてぴちぴちしたスタッフに任せてある。月下の出る幕ではないのだ。 ( ̄∇ ̄;) ハッハッハ…


はじめに断っておくが、医者と名のつく稼業に携わる者が、必ずしも左団扇(ひだりうちわ)の生活をしているわけではない。院長夫人は、イタリアンレストランでお友達とランチをし、週に1度はエステに通うなんていうのは、月下に言わせればとんでもない妄想である。


しかし、そんな左団扇組というのも、この業界にはいないわけではない。


左団扇組は、フェラーリでスーパーへ行き、メルセデスでコンビニへ行く。ちなみに、庭の水道で車を洗うなんてことはしない。ガソリンスタンドの手洗い洗車コースに出す。もちろんワックスもかける。貧乏性の月下には信じられないような贅沢だが、これが左団扇組の基本だ。


年に2回、家族で海外旅行をし、マイルが貯まったと言っては、またまたハワイあたりへ行く。そりゃぁ、マイルも貯まるだろうよって話だ。

「でも、うちの子たちは、ハワイよりもグアムの方が、喜ぶんですのよ」・・・・って、んなこと知るか。我が家の家族旅行は年に1度、移動手段は月下の愛車・・・・と、決まってるんだ。パスポートの期限なんて、はるか昔に切れたさ。あぁ、切れたさ。


まぁ、とにかく、うちは歯科医院である。左団扇組ではない歯科医院である。治療費を、家庭菜園でとれたほうれん草やトマトで支払っていく患者さんがいるような、そういう地域密着型の歯医者さんである。先日は、農家の御主人からダンボール箱に一杯、ピーマンを貰った。収穫したばかりだそうだ。スタッフみんなで分けたが、食べても食べても・・・・減らない(爆)。これが夏になると、スイカとナスが押し寄せてくる。冬に多いのは、ミカン。新巻鮭1本なんてこともあった。


”あのぉ・・・・できれば治療費は物納でなく、キャッシュでよろしく(笑)。”


・・・・まぁ、そういう歯医者さんなのである。