5000円の使い道。





ユニセフに寄付金を振り込んだ。5000円。この間、月下が友達のお寿司屋さんでバイトをして (・・・・っていうか、急遽借り出されて) 貰ったお金だ。まぁ、寄付金と言うには、ちょっと寂しい金額だが(笑)、主婦の財布にとっては決して少額ではない金額、だろう・・・・たぶん。そうなのか?よくわからん。


まぁ、とにかく5000円だ。5000円あったら、何が出来るだろう?・・・・と、考えてみる。


たとえば、CDショップに行って、ちょっと気になってたあのCDを買って、帰りに近くのレストランでのんびりランチが出来るだろう。よく陽の当たるテラスで、本でも読みながら、食後にはケーキを食べて、コーヒーも2杯くらい飲めるだろう。


映画を2本見てもいい。キャラメル・ソースのかかったポップコーンを食べながら、話題の洋画とマイナーな邦画を観よう。


本屋さんへ行って、気になってたあの本も、この本も、全部いっぺんに買ってもいい。しばらく本屋に行かなくて済むだろう。4〜5冊は買えるかもしれない。


どれもこれも、ささやかではあるけれど、充分に魅力的な使い道だ。『たかが5000円、されど5000円』 なんて、昔の人は上手い事を言ったものだ (そんなこと、誰も言ってません)。


しかし。


たとえば月下は、その5000円がなくて、CDが買えなくても、本の買い溜めが出来なくても、至福のランチが食べられなくても、話題の洋画が観られなくても、他にも、楽しそうな、あんなことやこんなことが、もしも全部出来なかったとしても、それで命を落とすような事はない。それだけは確かな事だ。


でも、この地球のどこか、月下の知らない遠い遠い国では、たった5000円で助かるかもしれない命が、風前にさらされた灯火のごとく、今にも消えようとしているらしい。


たとえば5000円あったら、子どもたちを寒さからまもる大きなウールの毛布が11枚買える。栄養不良の子どものために特別に開発された、高カロリービスケットが80箱買える。1錠で4〜5リットルの水を浄化できる浄水剤が3900錠買える。ポリオ予防のワクチンが380回分買える。


5000円とは、そういう金額らしい。


月下は、この日本という国に生まれて、命の危険にさらされる事もなく、無事に暮らしている。なんだかんだ言っても、この国は豊かだし、人々の生活は安泰だ。いや、今の御時世、この認識は間違っているかもしれないが、しかしそれでも、マラリアで30秒に1人ずつ子どもが命を落としている国からしてみれば、やっぱりこの国は安全だということになるのだろう。


しかし、私はただ、この時代に、この国に、偶然生れ落ちただけのことだ。それは私の能力とも、特性ともまったく無関係に為された割り振りであって、その結果として、月下はここで生かされているに過ぎない。


人は、生まれてくる国を、時代を、選べないのだ。


「だからどうした?」 と言われると、困る。ただ、そういうものだ、というだけのことだ。でも、そういうことを、忘れたくはないと思う。忘れてはいけないと思う。この時代に、この国に生きるひとりの人間としての、それが責任なんじゃないか?・・・・そんなふうに思う。


とはいえ、5000円で何かが変わるほど、世の中は甘くない。当たり前だ。いや、たぶん1億円積んだって、世界は変わらないのだろう。それが10億になっても、100億になっても、たぶん同じ事だ。そんな気がする。だとしたら、世界を動かすのは・・・・もし、そんなものがあるとしたら、それは、一体何だろう?それは・・・・何だろうなぁ?


月下はそんなことを考えている。


・・・・とまぁ、いろいろ書いてみましたが、結局のところ、5000円握り締めて 「これは私が貰ったバイト代だから、私が好きなように使います!!」 っていうのも、今さら大人気ないというか、浅ましいというか(笑)・・・・なんだか、イヤだなぁ〜〜と思ってね。まぁ、こんなふうだから、月下は一生お金持ちにはなれませんね、たぶん(笑)。