症状について

生活習慣と発癌因子の関係で有名なのが、嗜好品としての喫煙による肺癌、飲酒による肝臓癌です。この他にも食事、運動、休養の習慣はもちろんの事、さまざまな原因で発病します。中高年層の死亡原因の上位である癌に対して多くの皆さんが不安感を抱いている事と思いますが、決め手となる予防や治療の方法は見つかっていません。
 このような状況の中で東洋医学的鍼灸術が、どのように関わってきたのかを少ない症例ではありますが紹介します。

治療例

開業して間もない頃、60代後半の男性が「背中のこりを治して欲しい」と来院されました。軽微な鍼刺激で、こりも取れ「こんなに気持ちの良い治療は初めてだ」と大変に喜んでおりましたが、病院で検査を受けたところ[肺癌]が見つかり、入院後3ヶ月で亡くなられた事を聞きました。癌を見つける事も治す事も出来ませんでしたが、鍼治療後の壮快感をつげた様子は今だに忘れられません。
 昭和51年、当時54歳の女性が肩こりと全身の疲労感で来院され、その症状は8年前に末期の[子宮癌]の手術を受けてから続いているという事でした。それ以来、様々な症状で当院の鍼灸治療を行っていますが、手術から30年たった現在でも元気で農作業をしています。
 私の母親は昭和63年春頃から異常な体のだるさを訴え、私の鍼灸治療では治らないので大学病院で検査を受けましたが病気は見つかりません。症状は悪化し、その年の暮れになって[胆嚢癌]が見つかった時には末期で、翌年1月に手術をしたものの4月末に亡くなりました。約1年間の闘病生活の中で、鍼灸師である私が何も出来なかった虚しさだけが残った体験です。

最初の[肺癌]の症例では、たとえ癌であってもその苦痛を緩和する為に鍼治療が貢献できる事を知りました。しかし、鍼灸治療で楽になった症状が原因も分からないまま再発を繰り返す時は、お医者さんの診察を受けましょう。
 2番目の[子宮癌]の症例では、手術後8年を経過しての鍼灸治療ではありますが、本人も回りの人々も「こんなに丈夫になれるとは思わなかった」と大変に喜んでいます。西洋医学では病巣を取り除いたり攻撃する事が得意ですし、東洋医学では病邪を追い出したり、入りにくい体力をつける事が得意です。この患者さんは、東西両医学の利点を良いタイミングで活用できたケースではないかと思います。
 3番目の[胆嚢癌]ですが、東洋医学的鍼灸術で癌を見つける事も治すことも出来ない事は解るのですが、初発症状としてのだるさを治せなかった事が悔やまれます。解決策を見つけるために鍼灸の専門書を読みましたところ、癌の発病から進行に至るまでの期間は免疫機能が低下しているとされ、その免疫力を高めるための腰周囲の8ヶ所に鍼を刺し、その頭にお灸を焼く[灸頭鍼]が効果的である事を発見しました。この治療法を行っていても胃癌を発病した患者さんもおりますが、幸いな事に軽症で済み手術後の経過も良く元気で働いています。癌の治療をする事はありませんが、免疫異常による病気(慢性関節リュウマチ等)に応用して好結果を得ています。


日進月歩の医学界の中で、私たち鍼灸師も学問と技術を磨き、患者さんの期待に応えられるよう努力しておりますので、以前治らなかった病気も治る事があります。ただし東洋医学的鍼灸術では、お医者さんのように身体の変化を画像や数値で表す事は難しく、患者さんの訴える症状の変動と触覚等から得られた情報が手がかりです。ですから鍼灸治療を受けた感想を正直にご報告頂く事は、私たち鍼灸師の学術の進歩・向上につながりますのでよろしくご協力の程お願いいたします。


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